チームをまとめる手段の一つに、目標を使ったマネジメントがあります。その中でもOKRと呼ばれる目標管理のフレームワークは、成果を最大化するための手段としていま注目を集めています。
この記事では、まずはチームの目標管理でよくある失敗を確認した上で、OKRを用いたチームマネジメントのコツを紹介していきます。
目標管理のよくある失敗
チームマネジメントのコツをご紹介する前に、目標管理のよくある失敗とそれに対する対処法をご紹介します。
この部分をしっかりとフォローしておくことで、OKRを用いるにせよ、他の目標管理の仕組みを用いるにせよ、チームの成果を最大化させやすくなります。
目標を誰も覚えていない
どこのチームでもよくあるのが、せっかく立てた目標を誰も覚えていないというケースです。
経営層や上長が想いを込めて目標を立てたとしても、それが誰にも伝わっておらず、そして誰も覚えていないのであれば、目標が無いのとなんら変わりはありません。この場合、目標を用いたチームマネジメントがうまくいくはずもありません。
とはいえ、目標を覚えていないと嘆く前に、目標を浸透させるための活動をどれだけ行えているでしょうか。
日々の業務に追われる中で、目標を意識できる回数は限られています。マネジメントする側がうまく仕組みに落とし込まなければ、目標が意識されることなく1日が終わってしまうことは容易に考えられます。
そのため、マネジメントする側としては「いかに日々のコミュニケーションに目標を組み込むか」ということが大切です。朝会の共有内容に含めてしまう、日報のテンプレートに含めてしまうなど、普段のコミュニケーションの延長上に目標を組み込めるようにしましょう。
評価面談の時だけしか目標を振り返らない
次に多いのが、目標はチームメンバーの頭の片隅にあったとしても、評価面談の時期にしか目標の進捗や内容を振り返らないというケースです。
目標の振り返りや進捗状況の確認を行わないのであれば、目標を立てないのとなんら変わりはありません。目標を立てることと日々の振り返りをセットで行っていくことで、目標管理の効果を高めることができます。
そのためにも、目標をベースとした日々のコミュニケーションを心がけ、こまめに目標の振り返りや進捗の確認を行える状態にしておきましょう。
また、「目標管理シート」といった普段触りもしないようなファイルに目標が書かれていることも、これらを助長する要因の一つです。目標をなるべくメンバーの近くにおき、日常的に目標の内容を振り返り、進捗を確認できるような仕組みを作っておきましょう。
目標に意味を与えられていない
これは目標の立て方の問題でもあるのですが、目標自体に意味が与えられていない場合、目標によるマネジメントの効果をうまく引き出すことはできません。
例えば数値目標の背景を適切に共有できていなかったり、目標の内容をメンバーが腹落ちできていないケースなどです。
目標は立てることではなく、そこに向かって走ることに意味があります。そのためにも、目標にきちんとした意味付けを行い、メンバーが目標に向かって精一杯走っていけるような状態にしていきましょう。
OKRを現場でどう活かすか
ここまでは目標管理の失敗パターンをみてきましたが、それらを踏まえた上でOKRという目標管理のフレームワークを実際の現場でどのようにして活かしていくかについて説明していきます。
OKRへの理解をチームで深める
OKRはObjective(O)と呼ばれる定性的な目標と、それらを支えるKey Results(KR)と呼ばれる数個の定量的な目標を組み合わせた目標管理のフレームワークです。詳しくはこちらの記事をご確認ください。
定性的な目標や定量的な目標そのものには新しい部分はありませんが、その背景にある考え方が他の目標管理の仕組みと大きく異なるため、いま世間で注目を集めています。
とはいえ、OKRを導入したからといってすぐにチームの生産性がアップするわけではありません。なぜなら、OKRの効果を高めるためにはOKRへの理解が必須だからです。そのためまずは、チーム全体としてOKRについての理解を深めておくべきでしょう。
特に、「ムーンショット」を目指すという点の理解を深めておくべきでしょう。
OKRの運用においては、達成できるかどうかが五分五分な「ムーンショット」となるような目標を立てることが推奨されています。そのため、OKRの運用において目標が達成されるかどうかは稀であり、目標達成を前提としたこれまでのマネジメントとは大きく異なります。
例えば、KPIを用いたマネジメントにおいては、KPIを達成できないこと自体が問題とみなされます。他方、OKRを用いたマネジメントでは、KRの達成は非常に難しいとうことを全員が合意しており、その中で如何にして目標達成に向けたトライが出来るかということが重視されています。つまり、目標達成そのものよりも、目標達成に向けて如何に工夫するか、そして如何にトライしていくかが重要と考えられているのです。
そのため、マネジメントを行う側としては目標達成出来ないことを責めるのではなく、難易度の高い目標を達成するための手助けや、チームとしての支援を行っていくことが重要になります。また、メンバーの側としても、達成困難な目標に対して積極的なトライを行い、通常以上の成果を生み出すことが求められます。
これらのOKRの考え方を理解し、チームの共通認識として持っておくことで、より高い成果を生み出すことが出来るようになります。
OKRをチームに浸透させる
他の目標管理と同様に、OKRをチームに浸透させることが何よりも大切です。
マネジメントする側としては、どのようにしてチームにOKRを浸透させていくかを第一に考え、日々の活動をマネジメントしていきましょう。
また、メンバー間でOKRに関連するコミュニケーションを取ることも大切です。日々の会話の中にOKRを組み込むことで、自然と目標達成に向けての意識が高まります。他のメンバーの目標を知ることでメンバー同士の助け合いが生まれたり、競い合いが生まれるようなチームマネジメントをしていきましょう。
OKR運用のNG例
うまく活用できればチームマネジメントにおいても大きな効果のあるOKRですが、運用によっては逆効果になってしまうケースもあります。ここからはOKRのNG例および、何故それが良くないのかについて説明していきます。
ワクワクしない目標を立てる
OKRに慣れないうちは、これまでの目標管理と同じような「ワクワクしない」目標を立ててしまいがちです。これではOKRの効果が半減してしまうので、いかにしてその目標でチームをワクワクさせられるかということを考え、目標を言葉にしていきましょう。
ワクワクする目標を立てるコツは下記の三つです。
・定性的で意味を感じられる目標にする
・チームのメンバーのワクワクするポイントを知る
・人を鼓舞できる表現に変える
「100件の契約を取る」という定量的な言葉だけでは、多くの人間の心を動かせません。100件の契約の裏にある大義や想いなどを目標に込めてみるのも良いでしょう。
また、同じ表現だとしても、それが刺さるチームと刺さらないチームがあります。チームの特徴をしっかりと観察し、チームのメンバーがワクワクするところに刺さる目標にしていきましょう。
そして何よりも、人を鼓舞できる表現にすることが大切です。「契約を取る」という言葉より、「勝ち取る」「獲得する」などの言葉の方が人をやる気にさせる言葉に思えてきませんか?ちょっとした違いですが、目標に使う言葉の一つ一つに意味を込め、人を鼓舞できる表現を使うようにしていきましょう。
OKRの振り返りを行わない
OKRを立てるまでは良いのですが、OKRについての振り返りをしない場合、OKRの運用はうまくいかず、チームの成果も最大化されることはありません。
理想は、毎週月曜日にOKRに関連する重要なタスクをピックアップし、毎週金曜日にそれらの完了状況を振り返るといった運用です。これにより、毎週OKRの確認を自然と行うことができ、また、OKRに関連するタスクを優先的に進められるようになるため、結果としてチーム全体の成果が最大化されていくのです。
とはいえ、多くのチームにおいてはここまで詳細にOKRの振り返りを行えていないのではないでしょうか。せっかくOKRの運用を行うのであれば、一度は理想の型通りに運用してみるのもチームの成果を最大化させるには良いといえるでしょう。
毎週のOKRの振り返りというチームの型を早めに作ってしまい、OKRを日々振り返ることのできるチームマネジメントをしていきましょう。
上位のOKRを定めない
OKRの特徴として、上位の階層のOKRにおける「KR」と、下位の階層の「O」が関連するというものがあります。具体的には、組織全体のOKRと部署のOKR、そして個人のOKRの全てが関連しているといった具合です。
そのため、基本的には個人のOKRのみを定めるといったことは出来ません。なぜなら、個人の「O」の前提となる組織の「KR」が定まっていないからです。この状態で複数の個人がOKRを立ててしまうと、個々人がバラバラな目標に向かって進むことになってしまい、OKRの効果を最大限に活かすことができません。
そのため、まずは上位の階層のOKRをしっかりと定め、そこをベースとして個人のOKRを立てていくようにしましょう。そのためにも、事前にしっかりとスケジューリングして目標を立てていきましょう。
OKRに書かれていないことに注力してしまう
せっかくOKRを定めて一つのことに集中しようとしているのに、OKRに書かれていないことに注力してしまっては身も蓋もありません。
日々様々なタスクが発生するのは仕事につきものですが、そのタスクの優先度を決定づけるのがOKRの役割の一つです。短期的には優先度が高く見えるタスクであったとしても、もしかしたら大きな成果に繋がらないタスクかもしれません。限られた時間で最大限の成果を出していくためにも、まずはOKRに書かれていることに注力していきましょう。
OKRに書かれていないタスクに日々追われているのだとしたら、タスクの優先度を見直してみるのも良いでしょう。より大きな成果を生み出すため、日々の細かいタスクに目を瞑ってしまうのも目標達成の一つの方法です。もちろん程度問題ではありますが、より成果に結びつくことに日々の業務の時間を費やすようにしていきましょう。
OKRを活用したチームマネジメントのポイント
最後に、OKRを活用したチームマネジメントのポイントをご紹介します。
OKRに関するコミュニケーションを増やす
前述のように、せっかく立てた目標であっても、忘れられてしまっては意味がありません。
OKRを忘れられないために大切なことは、繰り返し伝えることです。言い換えるならば、OKRに関するコミュニケーションを増やし、OKRを意識する機会を積極的に増やしていくことが大切です。
毎朝定例をやっているのであれば定例の中にOKRの確認を組み込んでみたり、何かのタスクを行う際はそのタスクがどのOKRと紐づいているのかを確認する癖付けを行うのも良いでしょう。
いつものコミュニケーションの導線にOKRが加わることで、それらを意識する機会が自然と増え、結果としてチームが目標に向かって一つに動き始めるようになります。
とはいえ、OKRに触れる機会を増やしたいからといって、「OKRを壁に貼る」「OKRをメールで周知する」などだけを行なっても大きな効果はもたらしません。見慣れてしまえばただの風景と同じですし、意味のないプレッシャーをかけ続ける要因にもなり得ます。大切なことは、OKRに関連するコミュニケーションをどれだけ生み出せるかです。コミュニケーションに組み込まれて、人は初めてOKRに対しての意識が明確になっていくからです。
部下やチームのメンバーからOKRについての会話が自然と生まれるよう、日々のコミュニケーションを工夫していきましょう。
ちょうど良い目標を立てられるよう、部下と一緒に改善していく
OKRを使ったマネジメントの失敗パターンとして、実態に即さない「KR」を立ててしまうというものがあります。
目標が高すぎたり、逆に目標が低すぎたりすると、かえって逆効果になってしまいます。そのため、部下やチームにとってちょうどよい「KR」を立てていく必要があります。ここで重要になるのが、部下と一緒に目標を改善していくということです。
例えば、前期の目標が高すぎてやる気を阻害してしまっていたのであれば今期の目標値を少し控えめにしてみたり、部下から見ても低すぎる目標であればあと一つハードルを追加してみたりして、部下やチームにとってちょうど良い目標となるよう「目標自体を改善」していっていみましょう。
目標自体を改善していくためには、目標に関連するコミュニケーションも自ずと必要になります。また、部下やチームにあった目標を立てるためには部下やチームの状況を可能な限り正確に把握しておく必要があります。そのためにも、日々の業務に関連するコミュニケーションを増やしたり、質を高めたりといった活動が必要になるでしょう。
チームの成果を最大化していくために目標の改善は必要なことです。時間がかかってしまっても良いので、より良い目標が立てられるよう日々の改善を繰り返していきましょう。
1on1を活用する
日々の業務の中でOKRの話をするきっかけづくりはなかなか難しいものです。部下と一定の関係値がある状態ならまだしも、マネジメントがうまくいっていない状態のチームであれば、目標の話を上司が切り出すのはタイミング的にも難しい部分があります。
そこでおすすめなのが、定期的に上司と部下などで一対一の時間を作って話をする「1on1」と呼ばれる手法です。
1on1自体は一対一で話をするだけなので、特別なことはありません。とはいえ、業務時間内にしっかりと時間をとって一対一で話すからこその効果があるマネジメントの方法です。
アンオフィシャルな飲み会の場とも、オフィシャルな評価面談の場とも違う「オフィシャルとアンオフィシャルの間」の時間だからこそ、OKRに関連する話を切り出すことも簡単ですし、OKRに関しての部下の本音も聞き出しやすくなります。
正直なところのKR達成の自信度を聞いてみても良いでしょうし、立てたOKRそのものについての理解を深めるために、OKRの裏側にあるチームや組織の思想の部分を共有してみても良いでしょう。
普段の場や改まった場とは少し違う場所という特徴を生かし、部下とOKRに関するコミュニケーションを多くとってみましょう。
まとめ
大きな成果を生み出すための目標管理のフレームワークとしてOKRは優れた特徴を持っていますが、うまく運用できない場合は大きな成果に結び付けられません。
OKRの効果を最大限に発揮するためにも、まずはOKRの運用に関するコツを理解して適切なマネジメントを行っていきましょう。
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この機会にreporuのご利用をぜひご検討ください。